技術ライティング研修

技術記事執筆 研修講座

企画から公開・運用まで。「少し前の自分」が読んで助かる記事を、無理なく書き続けるための実践ガイドです。Qiita / Zenn / 個人ブログのいずれにも応用できます。

17章 想定学習時間 約50分 対象 記事を書きたい / 書き慣れたい人 章末 理解度クイズ 付き
この講座の使い方

左の目次から好きな章へ移動できます。各章のチェックリストにチェックを入れると進捗が保存され、次回も同じ状態から再開できます。本文を読んだら章末のクイズで理解を確認してみてください。

はじめに

本講座について

この講座は、技術記事を書く・レビューするときに役立つ一般的な原則と方法論を、実務で使える形に整理した研修教材です。特定の書籍や記事を複製したものではなく、広く知られた考え方を独自に再構成しています。

ここで紹介する内容は「正解」ではなく「たたき台」です。読者層やテーマによって最適解は変わります。ご自身の状況に合わせて取捨選択していただければと思います。

4つの基本原則

どの章にも共通する土台として、次の4点を最優先で意識します。

原則意味
深掘りする背景・事例・「なぜそうなったか」まで掘り、内容の浅い記事にしない
断定しすぎない読者は多様。持論を押し付けず、そうでないケースも想定して書く
上から言わない自分事として書き、読者に意見を押し付けない
環境名を伏せるディレクトリ名・ファイル名など、セキュリティに関わる固有名は別名に置き換える

執筆のフェーズ

執筆は次の流れで進めます。各フェーズのチェックリストは「14章」に集約しています。

企画 事前調査 構成設計 本文執筆 コード/図表 推敲 公開前チェック 公開・シェア
第0章

根底にある考え方

テクニックの前に、書く目的と姿勢を整えておきます。ここがぶれると、技術が上がっても記事は刺さりません。

  • 記事の目的は「読者への貢献」。自己成長・評価・収益は結果として後からついてくるもので、目的そのものに据えません。
  • 対象読者は「少し前の自分」を基準にします。その時期の自分が読んで助かる粒度・前提で書きます。
  • 完璧より継続。1本で完成形を目指さず、公開後も磨き続ける前提で書きます。
  • 正確性は信頼の土台。曖昧なら断定せず、裏取りできた範囲で書きます(→ 8章)。
  • 継続が最大の価値。単発の名作より、ゆるく長く出し続けることが資産になります(→ 13章)。
「読者にとっての価値」を自問する

「これを書くと、誰がどう嬉しいか」を1つでも言えれば、書く価値があります。初歩的でもニッチでも、助かる人が1人いれば十分です。読者の利益を起点に置くと、ネタの採否や書き方の判断がぶれにくくなります。

章末クイズ
本講座が勧める「記事の目的」として最も適切なものはどれでしょうか?
答え: 読者への貢献。 評価・収益・成長は目的ではなく結果です。完璧な1本より、継続して出し続けることを重視します。
Part 1 ・ 企画と設計
第1章

企画・ネタ選び

何を書くかは、書ききれるかどうかと、読まれるかどうかをほぼ決めます。採否の基準はシンプルです。

  • 「少し前の自分が喜ぶか」で判断します。読んで助かる人が1人でも想像できれば、書く価値があります。
  • 書きやすく価値が出やすい型を優先します。
    • トラブルシューティング(ハマった→原因→解決)
    • How-To(やりたいこと→実現手順)
    • 新機能・ツール紹介に自分の見解・優先順位を足したもの
    • やってみた / 体験談(失敗・工夫を含む)
    • 入門・学習法、書評、登壇 / 参加レポート
  • 自分の体験・考察・主観を必ず混ぜます。事実の列挙だけなら生成AIで代替できます。人間が書く価値は「私がやった / 感じた」に宿ります。
  • 既存記事の劣化コピーを作りません。日本語化・最新化・わかりやすさ向上・別観点など、新規価値を1つ以上足せるときだけ書きます。参考元は必ず明記します。
  • ネタは鮮度が命です。「書きたい」と思った熱量が高いうちに着手します。寝かせるほど書かれなくなります。
章末クイズ
人間が技術記事を書く価値が最も発揮されるのはどれでしょうか?
答え: 体験・見解を混ぜること。 事実の列挙は生成AIで代替できます。「私がやった / 感じた」という主観が、人間の記事の差別化要素になります。
第2章

事前準備・調査 — 正確性の土台

正確さは信頼の前提です。調べ方が雑だと、どれだけ文章がうまくても記事の価値は下がります。

  • 一次情報を当たります。公式ドキュメント・README・ソースコード・issue・PR を確認し、ネット記事や生成AIの出力を鵜呑みにしません。
  • 参照した情報の投稿日・対象バージョンを確認し、古い情報に基づいていないかを点検します。
  • 自分の言葉で説明できる状態まで理解します。丸写しは避け、「質問されたら答えられるか」を理解度の基準にします。
  • 長い記事は先にアウトライン(見出しの親子関係)を組みます。発散しがちなら、一度トピックを俯瞰整理してから順序を決めます。
  • 参考にした記事・書籍・公式ページは参考文献として控えておきます(記事末に列挙)。
よくある落とし穴

個人ブログや古いQ&Aだけを根拠にすると、すでに修正済みの問題や非推奨の方法を「正解」として書いてしまいがちです。最後は必ず一次情報で裏を取ります。

第3章

構成設計

はじめに・まとめ・タイトルの三位一体

  • 「はじめに」で、何を扱うか / 読むと何が得られるか(読者メリット)/ 対象読者は誰か / 前提知識・実行環境を宣言します。読者が冒頭で「自分向けか」を判断できるようにします。
  • 「まとめ」で要点を1〜2文で再提示します。尻切れを避け、読後感を整えます。
  • タイトル・はじめに・まとめは同じテーマを指すようにします。3つがずれていたら、本文が脱線している兆候です。

見出し

  • 使うのは h2 と h3 のみ。階層は h1 → h2 → h3 の順を崩さず、深くしすぎません。
  • 見出しは読者にとっての視覚的な区切りであり、記事全体の地図です。本文を読まなくても構成が分かるようにします。
  • 1画面に2〜3個見えるくらいの頻度(おおむね数百文字ごと)を目安にします。
  • 見出しは短く(目安30字以内)・具体的に。問いや要点を込めると注意を引けます。

流れと密度

  • 説明は段階的に並べます(「エラー→原因→解決」「やりたいこと→実現方法」など)。
  • 結論までが長いときは、冒頭にTL;DR(要点3〜5項目)や結論を先置きします。
  • 文章と図表・コードの分量はどちらかに偏らせません。文章だけ・コードだけのブロックが続かないよう、説明→コード→結果と交互に配置します。
章末クイズ
技術記事の見出しで使うべきレベルはどれでしょうか?
答え: h2 と h3 のみ。 記事タイトルが h1 に当たるため、本文では h2・h3 を使い、階層を飛ばさず深くしすぎないのが読みやすさのコツです。
第4章

タイトル

  • 本文を書き上げてから決めます(内容を要約する形が決めやすいため)。
  • 抽象的なタイトル(「React基礎」)を避け、内容が想像できる具体性を持たせます(何が分かる / できるか)。
  • 対象技術・対象読者・読者メリットを織り込みます。紛れやすい概念は 【React】 のように技術名を冠します。
  • 重要語を先頭に置きます(一覧で末尾が「…」と省略されても意味が通るように)。
  • 多少長くても、短く曖昧より明確を優先します。
  • 煽り・釣り・内容が伴わないタイトルは避けます。タイトルで掲げた価値は、本文で必ず提供します。

△ 弱いタイトル

Dockerについて / React入門 / エラーが出たので直した話

◎ 具体的なタイトル

【Docker】コンテナ起動が遅い原因をlayer cacheで30秒→5秒に短縮した手順

改善ポイント

  • 重要語(Docker)を先頭に
  • 対象技術を 【】 で明示
  • 得られる結果を数値で(30秒→5秒)
  • 何が分かるかが一目で伝わる
Part 2 ・ 執筆
第5章

本文の文章作法 — 読みやすさ

  • 文体を統一します(です・ます調で統一。途中で「〜しましょう」等を混ぜない)。
  • 一文を短く。長い文は分割し、最も伝えたいことを先に置きます。
  • 主語・述語を省略せず、対応を合わせます(「Aは〜される / する」の不一致を避ける)。
  • 接続の「が」は逆接のときだけ。単純接続は「〜したところ」「〜した。その結果」等に言い換えます。
  • 逆接(しかし / ですが / とはいえ)を連続させません。続くなら主張が定まっていない兆候です。
  • 同じ文末(〜です / 〜ません)を連続させません。語尾に変化をつけます。
  • 弱気表現を減らします(「〜かもしれません」「〜な気がします」を多用しない)。事実は言い切り、意見は押しつけない、を区別します。
  • 多義的な言葉を避けます(「適当に」「いろいろ」等は具体語に置き換える)。
  • 難しい漢字・補助動詞は開きます(例:「もちろん」「しばらく」「〜してみる」「〜してほしい」)。
  • ブラウザ表示前提で1文ごとに改行します。読点での手動改行はしません(端末幅で崩れるため)。
  • 推敲は読者モードに切り替えて複数回読み直します。一度寝かせてから読むと粗が見えます。

リライト例(Before / After)

上の原則を1文に当てはめると、読みやすさがどう変わるかの一例です(本講座オリジナルの作例)。

△ Before

設定ファイルをいろいろ調整したのですが、なかなかうまく動かず、最終的にはキャッシュをクリアしたところ動いたのですが、原因はよく分かりませんでした。

◎ After

設定ファイルを調整しても動きませんでした。キャッシュをクリアすると解決します。原因はビルドキャッシュの不整合でした。

何を直したか

長い1文を3文に分割し、結論(解決策)を先に出しました。単純接続の「が」を削り、多義的な「いろいろ」を具体化し、「分からない」で終えず原因まで踏み込んでいます。

章末クイズ
接続助詞「が」の使い方として、本講座が推奨するのはどれでしょうか?
答え: 逆接のときだけ。 単純接続の「が」は文意を曖昧にします。「〜したところ」「〜した。その結果」などに言い換えると読みやすくなります。
第6章

サンプルコードの規範

  • 嘘をつきません。掲載前に実際に動かし、説明・実行結果と一致させます。編集フォームに直書きしません。
  • 当たり前品質を満たします(正しいインデント=半角スペース、一貫した記法、言語標準の命名規則、全角混入なし、Lint通過)。
  • コードブロックで掲載し、コピペ可能にします。画像にしません(コピー・検索ができなくなるため)。
  • 言語指定を正確に。ログ・ターミナル出力・エラーなど整形不要なものには言語指定をしません。
  • 実行結果を併記します(コンソール出力・画面表示・テスト結果など)。
  • コピペで動く完全性を意識します。必要な import を含め、省く場合は「…略…」と明示します。
  • 意味のある名前を使います(foo / bar / hoge は原則避ける)。
  • 難易度は段階的に上げます。最小例から始め、要素を1〜2個ずつ追加します。
  • 業務コードをそのまま貼りません。記事用に最小化・匿名化します。環境名・ファイル名も伏せます。
  • セキュリティに配慮します。初心者がコピペしても危険でないコードにします。
  • バージョン情報を明記します(言語・FW・ライブラリ・OS・DB など)。
  • 例示用の値は予約ドメイン(example.com 等)を使います。

差分は diff 形式で見せる

Before / After を見せるときは diff が分かりやすく、コメントは行末でなく対象行の前の行に置くと横スクロールを避けられます。

# タイムアウトを延ばして再試行に対応
- client = Client(timeout=3)
+ client = Client(timeout=30, retries=3)
  response = client.fetch(url)
章末クイズ
エラーメッセージやログを記事に載せるとき、適切な方法はどれでしょうか?
答え: テキストで載せる。 エラーや出力を画像化すると検索もコピーもできません。読者が同じエラーで検索して辿り着けるよう、テキストで載せます(整形不要なので言語指定はしません)。
第7章

図表・メディア

  • テキストで伝わりにくい構造・概念は図解します。
  • スクリーンショットは必要部分だけを、あらかじめ小さめのウィンドウで撮ります(スマホ表示でも読めるように)。注釈・強調を加えます。
  • エラーや出力は画像化しません(テキストで載せる=検索・コピー可能)。
  • 動き・操作フローは GIF / 動画で示します。
  • 見出し・本文・コード・図のバランスを取り、単調さを避けます。
  • アクセシビリティ:画像には内容を表す代替テキスト(alt)を付け、情報を色だけに依存させません(形・ラベル・凡例でも区別できるように)。
図は記法ベースで描くと保守しやすい

構造図やフローは、作図ツールの画像より mermaid のような記法で描くと、後から修正でき、差分も追えます。ASCIIアートは環境によって崩れるため避けます。

Part 3 ・ 品質と配慮
第8章

正確性・信頼性・引用

  • 日付は年から書きます(「3月のアップデート」→「2026年3月のアップデート」、「現時点」→「2026年◯月時点」)。
  • 技術名の表記を公式に合わせます(Java / GitHub / macOS / PostgreSQL など、大小・スペース)。
  • 他者テキストの引用は > で明確に区別し、出典を示します。GitHubコードは可変な main ブランチではなく、commit SHA(または不変運用のタグ)+ 行番号の permalink で参照します。GitHub では対象行を選んで y キーで固定URLを取得でき、Markdown ファイルの行には ?plain=1#L14 のように ?plain=1 を付けます。
  • おことわりを先回りで書きます(「初心者向けのため詳細は割愛」「特定環境での確認のみ」など)。
  • オピニオン系は前提・背景・自分の立場を冒頭に書き、読者が文脈を共有できるようにします。
  • 公開前に可能なら第三者(人 / AI / 公式)にファクトチェックを依頼します。
  • ライセンスを守ります(出典表記・改変可否・商用可否を確認)。サンプルのリポジトリは特定 commit に固定します。
  • 生成AIの出力を含める場合はその旨を明記し、内容は自分で検証してから載せます。事実・コードの正しさの責任は書き手にあります。
> 引用文はこのように示します。
> 複数行でも各行に > を置きます。

出典: 公式ドキュメント(2026年3月時点)
引用文はこのように示します。
複数行でも各行に > を置きます。

出典: 公式ドキュメント(2026年3月時点)

章末クイズ
記事内で日付や時点を書くときの推奨はどれでしょうか?
答え: 年から明記する。 「現時点」は読まれた時期によって意味が変わります。年月を書けば、読者が情報の鮮度を自分で判断できます。
第9章

表現の配慮・炎上回避

  • 主語を小さくします。「エンジニアはみんな〜」ではなく「私は〜」。
  • 価値観を押しつけません。「こうすべき」より「自分はこうした」。
  • 他者・他技術を否定形で貶めません。「A は B より合う場面がある」と書き、「B はダメ」とは書きません。異論が出やすいテーマでは「異論は歓迎します」と前置きします。
  • 愚痴・批判過多を避け、ウケ狙いのジョークに頼りません。
  • 怒りで即公開しません。一晩寝かせて冷静に読み直します。
「主語を小さく」が効く理由

「みんな」「普通は」と書くと、当てはまらない読者に反発されます。「私の現場では」と限定すれば、同じ主張でも事実の共有として受け取られ、無用な炎上を避けられます。

第12章

生成AIで書くときの自戒

生成AIで下書きを作る人が増えました。だからこそ、AIに任せきりにしない工夫が差になります。

  • 教科書的な要約だけにしません。予期せぬ失敗・発見・回り道といった「経験」こそ、人間の読者が価値を感じる部分です。実体験があるなら必ず織り込みます。
  • 個性・クセ・ざらつきを残します。完璧に流暢で無個性な文章は「情報はあるが人がいない」読後感になり、印象に残りません。
  • 表現の部分的なブラッシュアップに AI を使うのは有効です。ただし全体を機械任せにせず、構成・主張は自分で決めます
  • 4つの基本原則(深掘り / 断定しすぎない / 上から言わない / 環境名を伏せる)を最優先で守ります。
章末クイズ
生成AIを使って技術記事を書くとき、特に意識すべきことはどれでしょうか?
答え: 経験・個性を織り込む。 要約はAIで誰でも作れます。失敗や回り道といった経験、書き手の個性が「人間が書いた記事」の価値になります。
Part 4 ・ 公開と継続
第10章

公開前チェック・公開・シェア

  • 書き手モードから読者モードに切り替えて再読し、スマホでプレビューして崩れを確認します。
  • タグ / トピックは最大5個。中心技術から優先します。方言のある技術は実行環境(MySQL / PostgreSQL 等)も併記し、表記は記事数の多い標準形に合わせます。新規タグの乱立は避けます。
  • 関連する過去記事への「あわせて読みたい」導線を検討します。
  • シェアは手動でひとこと添えて行います。「自分の記事であること」と「読者メリット」を明記します。
  • 公開直後だけでなく時間を空けて複数回シェアします。社内 Slack や技術コミュニティにも共有します。
  • 公開後も運用します。指摘は加筆修正で反映し、陳腐化したらアップデート(打ち消し線+追記+更新通知)します。
第11章

反応との向き合い方

  • 反応がない=劣っている、ではありません。露出機会やフォロワー数の問題です。継続で土台が育ちます。最初は反応が乏しくて当然で、数十本続けて時々「当たり」が出る程度に見積もります。
  • バズは運の要素が大きいです(対象読者の母数に依存)。「付いたらラッキー」程度に構えます。
  • バズは一過性です。数日で平常のアクセスに戻り、通りすがりの大半は固定読者になりません。次も気負わず平常運転で書き続けます。
  • ネガティブコメントは読まれている証拠でもあります。客観視します。
  • 技術的な指摘は、知識を分けてもらえる機会でもあります。納得できれば直して感謝します。返しにくい / 攻撃的なものはスルーしてかまいません。
  • 無言のいいね・シェアも、立派なポジティブ反応として数えます。
  • 承認欲求は燃料ですが、暴走させません。「バズるため」に内容が劣化していないか、時々自問します。
第13章

継続・習慣化とキャリア

書く力よりも「出し続ける力」が、最終的な差になります。続けられる仕組みと心構えを持ちます。

動機と継続

  • 自分が書く動機を一度言語化しておきます(「誰か1人は役に立つ」「自分用の記録」など何でも)。動機があると失速しにくくなります。
  • 「読者にとっての価値(誰がどう嬉しいか)」を常に自問します。1つ言えれば書く価値があります。
  • 反応・収益は「付いたらラッキー」程度に置きます。狙うのは評判・信用の蓄積で、それが後の登壇・寄稿・仕事の依頼につながります。
  • 気楽に、細く長く。毎日更新のような高すぎるハードルを課しません。月1本、つらければさらにゆっくりでよいです。

時間とスピード

  • 「書きたい」と思った瞬間が熱量の最高潮です。寝かせるほど熱は冷め、お蔵入りになります。思い立ったら早く着手します。
  • 執筆に時間をかけすぎません。標準的な分量なら上限(目安2〜3時間)を決め、完璧を待たずに公開します。
  • 完璧さより個性。流暢で無個性な文章より、書き手のクセ・経験というざらつきが残るほうが記憶に残ります。

公開先・運用の判断

  • 公開先を使い分けます。技術が主役のネタは技術系プラットフォーム(Qiita / Zenn)、自分が主役の話や規約に馴染みにくい内容は個人ブログへ。各サービスのガイドライン適合で判断します。
  • マルチポスト(同一記事の複数同時投稿)は基本的に避けます。修正の二重管理・反応の分散・どれが本家か不明、というデメリットが大きいためです。良い記事は1か所でも SNS 経由で届きます。
  • アドベントカレンダー等の企画は、ネタ探し不要・締切効果・お祭り感で継続に効きます。ただし投稿が集中する時期は埋もれやすいので、力作は時期をずらす選択肢も持ちます。

認知とキャリア

  • 名前・アイコンを複数プラットフォームで統一すると認知されやすく、思わぬ依頼の機会も逃しにくくなります。実名・顔出しは必須ではありませんが、認知と信用につながりやすいです。
  • 他者の記事へのいいね・シェア・コメントも立派なアウトプットです。コミュニティ内の関係が育ち、巡り巡って自分の記事にも還ってきます。
  • 記事を書く力は登壇・書籍・仕様書・チャット説明にそのまま応用できます。「相手に分かりやすく伝える」技術は職場評価にも直結します。
章末クイズ
記事執筆を長く続けるうえで、本講座が勧める姿勢はどれでしょうか?
答え: 細く長く続ける。 「初期集中→失速」より「低頻度でも数年継続」のほうが資産になります。完璧で未公開の記事より、不完全でも公開された記事のほうが価値があります。
リファレンス
第14章

フェーズ別チェックリスト

公開前に使える実践チェックリストです。チェックは自動保存され、次回も同じ状態で再開できます。

企画・調査

構成・タイトル

文章

コード・図表

正確性・配慮

公開・運用

第15章

記事パターン別テンプレート

記事の型を決めたら、対応する構成スケルトンを下敷きにします。あくまで一例で、内容に応じて見出しは自由に足し引きします。どの型でも共通して、長くなる節には見出しを足し、「見出しを追うだけで概要が掴める」状態を保ちます。

目的タイプ / パターン構成スケルトン勘所
A. 問題を解決する型
トラブルシューティングはじめに → エラー → 原因 → 解決方法 → 実行環境 → まとめ → 参考文献原因と解決の因果を明確に。いつから起きたか / 最新で解消済みかまで掘る
How-To(手順解説)TL;DR → はじめに → 対象読者 → 実行環境 → 事前準備 → 手順 → まとめ → 参考文献「自分用メモ」に陥らず、前提知識のない読者を意識する
コードレビュー指摘はじめに → 良くない例(なぜ) → 対処法(どう良くなるか) → まとめ業務コードを直貼りせず、ユースケースが想像できる例にする
B. 紹介・体験を共有する型
新機能・ツール紹介はじめに → 動作確認バージョン → 新機能紹介 → まとめ → 参考文献リリースノートのAI要約は誰でも作れる。私見・厳選でオリジナリティを出す
やってみた・使ってみたはじめに → 動作確認バージョン → やったこと → まとめ → 参考文献戸惑った点・ハマった点を書く。実装の裏側まで掘る
TIPS・便利テクニック集はじめに → 対象読者 → 実行環境 → TIPS紹介 → まとめ各TIPSに「できると何が嬉しいか」を添える。「20選」など個数で訴求
C. 知識を体系化する型
入門記事はじめに(学べること・経歴) → 対象読者 → 実行環境 → 技術の説明 → まとめ易しい内容から段階的に。長すぎるなら分割する
学習方法・成長法はじめに(学べること・経歴) → 対象読者 → 学習方法 → まとめ → 参考文献教科書的説明でなく「私はこうしてきた」という経験中心に
技術書の書評はじめに(対象書籍・動機・自分のレベル) → 概要 → 感想 → まとめ「内容まとめ」でなく自分の感想を書く(丸写ししない)
D. 意見・成果を発信する型
技術エッセイはじめに(省略可) → 思っていること → まとめ(読者へのメッセージ)勢いで書き切り、見出しは後付け。「ポエム」化に少し注意
技術系オピニオンTL;DR → はじめに(動機・現場文脈) → 主張(根拠と Pros/Cons) → まとめ過激な物言いは炎上リスク。熱くなったら一晩寝かせる
成果報告はじめに → やったこと(動機・詳細・工夫・技術スタック) → まとめ(謝辞)過度に謙遜せず堂々と。外から見えない工夫こそ丁寧に説明する
E. 現場・コミュニティの型
効果的だった工夫・改善策はじめに(概要・現場文脈) → 現場で起きたこと → まとめ(学び)「あなたもこう困っていませんか→私はこう解決」の姿勢。効果は数値で定量化する
開発現場の体験談はじめに(概要・現場文脈) → 起きたこと・感じたこと → まとめ(学び)守秘義務に注意。出せない内容はぼかし、不安なら関係者に下書きレビューを依頼する
参加レポートはじめに(開催情報・リンク) → 印象に残ったセッション・変化 → まとめ(感謝)終了後なるべく早く公開。写真は他参加者の写り込みに注意
F. 二次的・派生の型
翻訳はじめに(翻訳である旨・原文情報・許諾) → 翻訳本編 → まとめ著作権は原著者に。事前許可を取り、タイトルに【翻訳】を入れる
SNS投稿の記事化固定テンプレなし(近いパターンを流用)X で3連投以上になりそうならブログに切替。ポストURLの貼付はノイズが多いので文章を書き起こす

本講座では、これらの型を「目的タイプ(A〜F)」でグルーピングしています。型は厳密な分類ではなく、1本の記事が複数の型をまたぐこともあります。迷ったら「読者が何を得たいか」から逆算して型を選んでみてください。

第16章

Markdown記法リファレンス

記法の「入力」と「表示結果」を並べて確認できます。タブを切り替えると、ソースとプレビューを行き来できます。特記なき記法は Qiita・Zenn 両対応です。

強調・装飾

**太字** または __太字__
~~打ち消し線~~

斜体(*…*)は日本語では
見栄えしないため基本使いません。

太字 または 太字

打ち消し線

斜体は日本語では見栄えしないため基本使いません。

強調にコードスパンを使わない

強調したいだけのときに `…`(コードスパン)を使うのは誤りです。コードスパンはコード表記専用です。強調は **…** を使います。

テーブル

| 項目 | 値 |
|:-----|---:|
| 左寄せ | 右寄せ |
| name | 100 |
項目
左寄せ右寄せ
name100

区切り行のコロンで配置指定:左 --- / 中央 :-: / 右 ---:

リスト

- 親項目
  - 子項目(スペースでインデント)

1. 一つ目
1. 二つ目
1. 三つ目
  • 親項目
    • 子項目(スペースでインデント)
  1. 一つ目
  2. 二つ目
  3. 三つ目

番号付きは連番が自動採番されるので、すべて 1. で書いてかまいません。

引用

> 行頭に > を置きます。
> 連続行でも毎行 > を置くのが安全です。
>
> - 引用内でも箇条書きが使えます
行頭に > を置きます。
連続行でも毎行 > を置くのが安全です。
  • 引用内でも箇条書きが使えます

Qiita は各行に > が必要です(省略不可)。

注意・警告ボックス(方言)

:::note info
補足(緑)
:::

:::note warn
注意(黄)
:::

:::note alert
警告(赤)
:::
補足(緑)
注意(黄)
警告(赤)

Zenn は :::message / :::message alert を使います。

コードブロック(言語・ファイル名指定)

```tsx:Button.tsx
export const Button = () => {
  return <button>OK</button>;
};
```
Button.tsx
export const Button = () => {
  return <button>OK</button>;
};

言語名は明示するのが基本です。` ` `言語:ファイル名 の形でファイル名も付けられます。

コードブロックの中でコードブロック記法を説明するとき

外側をバッククオート4つ ```` で囲みます。コードスパン内でバッククオートを示すときは、2つで囲みます。

差分(diff)付きコードブロック

```diff_js
- const a = 1;
+ const a = 2;
```

Qiitaは diff_js(_区切り)
Zennは diff js(スペース区切り)
- const a = 1;+ const a = 2;

行頭 -=削除 / +=追加 / 半角スペース=変更なし

うっかりメンション対策(重要)

@付きパッケージ名は必ずコードで囲む

スコープ付き npm パッケージ名(@types/react など)の「@+語」を本文に裸で書くと、Qiita / GitHub 等で実在ユーザーへ意図しないメンションが飛びます。@ を含む語は必ずコードスパン / コードブロックで囲みます。囲めばリンク化されず、メンションも飛びません。

脚注

本文に脚注をつけます[^1]。

[^1]: これが脚注の内容です。

本文に脚注をつけます[1]

1. これが脚注の内容です。

ラベルは任意で、番号は自動です。Zenn はインライン脚注 本文^[注釈] も使えます。

エスケープ・HTML・埋め込み

  • 記号が Markdown と誤認される場合は、直前に \ を置いてエスケープします(例: 顔文字)。
  • HTMLタグの直書きは、Qiita は多くのタグに対応します。Zenn は <br> と HTML コメントのみです。
  • 埋め込みは、Qiita が Speaker Deck 等の <script> タグ、Zenn は @[speakerdeck](スライドID) 形式です。
方言は公式の記法ページで確認する

ここで挙げた記法の多くは Qiita・Zenn 両対応ですが、ボックスや埋め込みなど方言もあります。迷ったら各サービスの公式記法ページを確認してみてください。

おつかれさまでした

最後にもう一度。技術記事のいちばんの土台は「読者への貢献」と「続けること」です。完璧な1本を待つより、不完全でも公開して磨き続けるほうが、長い目で見て大きな資産になります。

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